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6.152026
M&Aで事業を引き継ぐ──第三者承継の基本と行政書士ができること

「子どもに継ぐ気がなく、社内にも適任者がいない。そうなると、もう廃業しかないのだろうか」──こうしたご相談が、香川県内でも増えています。
しかし、親族や従業員以外の第三者に事業を引き継ぐ「M&A(エムアンドエー:合併・買収を意味し、広く第三者への事業承継を指します)」という選択肢があります。令和6年度には、全国の事業承継・引継ぎ支援センターで第三者承継の成約件数が2,132件と過去最高を更新しました。M&Aは大企業だけのものではなく、中小企業・小規模事業者にとっても身近な手段として広がっています(引用元:独立行政法人中小企業基盤整備機構「令和6年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績について」2025年5月30日公表)。
この記事では、事業承継の文脈でのM&Aの基本、株式譲渡と事業譲渡の違い、そして行政書士がM&Aのどの場面でお手伝いできるかを整理します。
1.M&Aとは何か──「売る」ことで事業を残す選択
M&Aは「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の略ですが、中小企業の事業承継の文脈では、「事業を他の人・企業に引き継いでもらうこと」を指すのが一般的です。
廃業すれば、それまで築いてきた取引先との関係、従業員の雇用、地域に根ざしたサービスはすべて終わってしまいます。一方M&Aで適切な引き継ぎ先が見つかれば、事業を存続させながら現オーナーは引退できます。「売る」という言葉に抵抗を感じる方もいらっしゃいますが、事業と雇用を守るための経営判断として、前向きに検討される経営者が増えています。
2.中小企業のM&Aの主な手法──株式譲渡と事業譲渡
中小企業がM&Aで使う手法は、大きく「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つです。
(1)株式譲渡
会社の「株式(所有権)」を買い手に渡す方法です。会社という箱ごと引き渡すイメージで、資産・負債・契約・許認可はすべてそのまま引き継がれます。手続きが比較的シンプルで、中小企業のM&Aではもっとも多く使われます。
取引後も許認可が会社に残る点は大きなメリットですが、簿外債務や未払い税金なども一緒に引き継いでしまうリスクがあるため、買い手が財務内容を詳しく確認する「デューデリジェンス(DD:精密調査)」が重要になります。DDは会計士・弁護士の業務領域です。
(2)事業譲渡
会社そのものではなく、事業の「一部または全部」を選んで売る方法です。売り手は必要な事業だけを残すことも、会社を清算しながら事業だけを引き渡すことも可能です。
前回記事でご紹介したとおり、事業の重要な一部または全部を譲渡する場合は、原則として株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)が必要です(法的根拠:会社法第467条第1項)。また、事業に紐づく許認可は自動的には引き継がれず、業種ごとに手続きが必要になります。
3.M&Aの基本的な流れ
中小企業のM&Aは、おおむね次のような流れで進みます。
- 準備・整理:財務情報の整理、保有する許認可の確認、自社の強みの整理
- 相談・マッチング:M&Aの仲介機関や事業承継・引継ぎ支援センターへ相談、買い手候補の探索
- 交渉・基本合意:価格・条件の交渉、基本合意書(LOI)の締結
- デューデリジェンス(精密調査):財務・法務・許認可の調査
- 最終契約・クロージング:株式譲渡契約書または事業譲渡契約書の締結、引き渡し
- アフター統合(PMI):引き渡し後の業務移行、許認可の切り替え手続き
全体で半年〜1年以上かかることも多く、特に許認可の承継手続きは時間が読みにくいため、早めの準備が重要です。
4.行政書士ができること──M&Aの3つの場面
M&Aは多くの専門家が関わる手続きですが、行政書士が担う場面は主に3つです。
(1)許認可の承継手続き
事業譲渡では、建設業許可・飲食店営業許可・運送業許可など、業種に応じた許認可の承継申請・届出が必要です。許可によっては事前に手続きが必要なものもあり(例:建設業法第17条の2の事前認可制)、クロージングのスケジュールに合わせた早期着手が求められます。これらの許認可手続きは行政書士の業務領域です。
(2)事業譲渡契約書・各種契約書の作成
事業譲渡の場面では、事業譲渡契約書のほかに、秘密保持契約書(NDA)、覚書、業務引継ぎに関する合意書など、複数の契約書が必要になることがあります。前回記事でご紹介したとおり、これらの契約書作成は行政書士の業務範囲です(争訟・法的主張に関する部分は弁護士の領域)。
(3)補助金申請のサポート
中小企業がM&Aに取り組む際には、国の「事業承継・引継ぎ補助金」を活用できる場合があります。M&Aに伴う専門家費用(仲介手数料、デューデリジェンス費用など)の一部が補助対象になることがあります。補助金の要件・申請書類は年度ごとに変わりますので、最新の公募要領をご確認ください(情報元:中小企業庁「事業承継・引継ぎ補助金」)。あおば行政書士法人では、この補助金申請のサポートも行っています。
5.想定Q&A
Q:「M&Aというと大きな会社の話に聞こえますが、うちのような小さな会社でも使えますか?」
A:はい、小規模な会社でも利用できます。全国の事業承継・引継ぎ支援センターは、小規模事業者を含む中小企業の無料相談窓口として設置されています。香川県にも「香川県事業承継・引継ぎ支援センター」があり、譲渡希望・譲受希望の両方の登録を受け付けています。「まだ決めていない」という段階でも相談できます。
Q:M&Aを依頼するときに、最初はどこに相談すればいいですか?
A:まず費用ゼロで相談できる公的窓口として、「香川県事業承継・引継ぎ支援センター」をご活用ください。その後、必要に応じてM&A仲介会社や各士業(会計士・弁護士・行政書士など)への相談に進む流れが一般的です。当事務所でも、許認可や契約書に関するご相談から入り、他士業や支援機関につなぐ橋渡しを行っています。
まとめ
- M&Aは後継者がいない場合でも事業と雇用を守れる第三者承継の手段
- 令和6年度の全国成約件数は2,132件と過去最高(中小機構・2025年5月公表)
- 株式譲渡は会社ごと引き継ぐ、事業譲渡は事業を選んで移す、が主な違い
- 事業譲渡には株主総会の特別決議(会社法第467条)と許認可の承継手続きが必要
- 行政書士は「許認可承継」「契約書作成」「補助金申請」の3場面でサポートできる
次回(6月22日公開予定)は、「事業承継を支える補助金──活用できる制度と申請のポイント」をお届けします。事業承継・引継ぎ補助金をはじめとする補助制度について、行政書士の視点で整理します。
あおば行政書士法人
代表行政書士 大林 真由子
事業承継のこと、まずは気軽にご相談ください。
あおば行政書士法人では、香川県を中心に事業承継にまつわる許認可の引継ぎ、契約書の作成、補助金申請のサポートを行っています。「何から始めればいいかわからない」という段階からお手伝いいたします。
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初回相談は無料です。オンラインでの対応も可能です。
※ 本記事は2026年6月時点の公表データ・法令・制度に基づく一般的な情報提供です。個別のケースについては、必ず専門家にご相談ください。
引用元一覧
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「令和6年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績について『第三者承継(M&A)の成約件数が過去最高を更新』」2025年5月30日公表 https://www.smrj.go.jp/press/2025/f7mbjf000000dnpt.html
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」2024年8月30日公表 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf
- e-Gov法令検索「会社法 第467条(事業の譲渡等の承認等)」https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 中小企業庁「事業承継・引継ぎ補助金」https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_hojyokin.html
- 香川県事業承継・引継ぎ支援センター https://kagawa-hikitsugi.go.jp/






