ブログ
6.222026
NPOの代表交代・事業承継──意外と知らない手続きと注意点

「長年NPO法人の代表理事を務めてきたけれど、そろそろ次の世代に引き継ぎたい」──そうご相談をいただくと、株式会社の事業承継とは違うNPOならではの手続きが意外と多いことに、皆さん驚かれます。
NPO法人(特定非営利活動法人)の代表交代は、所轄庁(香川県を含む都道府県や政令指定都市)への役員変更の届出と、法務局での代表者変更登記の両方が必要です。これに加えて、定款(じょうかん:法人の基本ルール)の変更や、認定NPO法人の場合の追加手続きなど、論点はいくつにも分かれます。
この記事では、NPO法人の代表交代・事業承継について、手続きの全体像、所轄庁・法務局それぞれの届出のポイント、香川県内での窓口、定款変更が必要になる場面までを行政書士の視点で整理します。
1.NPO法人の事業承継は「株式会社」と何が違うのか
株式会社の事業承継は、株式を後継者に譲ることで「所有権」も「経営権」も移転できます。これに対してNPO法人には株式が存在せず、所有者という概念もありません。代表交代は、あくまで「役員(理事長または代表理事)の交代」として行います。
主な違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 株式会社 | NPO法人 |
|---|---|---|
| 所有 | 株主が保有 | 所有者なし |
| 経営権の移転 | 株式譲渡で完結 | 役員変更(社員総会での選任) |
| 監督官庁 | (特になし) | 所轄庁(都道府県・政令市) |
| 利益分配 | 株主に配当可 | 構成員に分配不可 |
| 定款変更 | 任意(株主総会) | 一部は所轄庁の認証が必要 |
NPO法人は「公益のために運営されている法人」であるため、代表交代という内部の出来事でも、所轄庁という外部機関への届出が必要になる点が大きな特徴です。
2.代表交代の基本ステップ
NPO法人の代表交代は、おおむね次の4ステップで進めます。
- ステップ1:社員総会または理事会で後任の代表理事を選任する(定款の定めによる)
- ステップ2:法務局へ役員変更登記を行う(代表権ある役員の変更は登記事項)
- ステップ3:所轄庁へ役員変更等の届出を提出する
- ステップ4:銀行口座・取引契約・補助金関係の名義変更を行う
それぞれ期限と書類が異なるため、順番に整理します。
(1)社員総会または理事会での選任
役員選任は、各NPO法人の定款で定めた方法によります。一般的には、社員総会で理事を選任し、その理事の互選で代表理事を決定する、というのが標準的な流れです。会議の議事録は、後述の登記・届出時の添付書類として必須となります。
(2)法務局での代表者変更登記(2週間以内)
代表権を持つ役員(代表理事・理事長)の変更があったときは、変更の日から2週間以内に、主たる事務所の所在地を管轄する法務局で変更登記を行う必要があります。この登記は司法書士の業務領域です。あおば行政書士法人では、提携司法書士へお繋ぎする体制をとっています。
(3)所轄庁への役員変更等届出
役員(理事・監事)の氏名・住所等に変更があった場合、所轄庁へ役員変更等届出書を提出する必要があります。添付書類として、変更後の役員名簿、新任役員の住民票(写し)、就任承諾書および誓約書(特定非営利活動促進法第23条第2項に基づく)が必要です(引用元:内閣府NPOホームページ)。
香川県内のNPO法人で、主たる事務所が香川県内のみにある場合は、香川県が所轄庁となります。手続き窓口は香川県政策部県民活動・男女共同参画課のNPO担当です(引用元:香川県「NPO法改正について」)。
(4)銀行口座・契約等の名義変更
代表者変更登記が完了し、新しい登記事項証明書(履歴事項証明書)を取得した後、銀行口座の代表者名義変更、賃貸借契約、補助金交付決定通知の名義変更などを進めます。とくに継続している補助金(事業承継補助金・小規模事業者持続化補助金など)については、所管へ早めにご相談ください。
3.定款変更が必要になる場面
代表交代そのものは定款変更を伴わないことが多いですが、次のような場合は定款変更が必要になります。
- 主たる事務所の所在地が変わるとき
- 事業内容を変更(追加・廃止)するとき
- 役員の任期や定数を変更するとき
- 法律改正に合わせた条項の修正が必要なとき
定款変更には、所轄庁の「認証」が必要なものと、所轄庁への「届出」のみで足りるものの2種類があります(特定非営利活動促進法第25条)。認証が必要な定款変更は、社員総会の特別決議のうえ、所轄庁へ申請し、約2〜3か月の審査期間を経て認証されます。香川県の場合の標準処理期間や様式は、所轄庁ホームページで確認できます(引用元:香川県「NPO法人Q&A 定款変更」)。
なお、定款変更の文案作成や認証申請の代理は、行政書士の業務領域です。
4.認定NPO法人の場合の追加手続き
認定NPO法人(寄付金に対する税制優遇を受けられる法人)の場合、代表交代に加えて、認定要件を満たし続けていることを所轄庁に示すための継続的な情報提供が求められます。認定制度は、2011年の税制改正により、国税庁長官の認定から所轄庁の認定に移行しました(2012年4月1日施行)。
認定NPO法人の維持要件には、パブリック・サポート・テスト(市民からの支援を受けているかの基準)、情報公開、適正な運営など複数の項目があります(引用元:内閣府NPOホームページ「認定制度について」)。代表交代を機に運営体制が大きく変わる場合は、認定要件を満たし続けられるかを事前に確認する必要があります。
なお、税制優遇に関する個別の判断(寄付金控除の計算など)は税理士の業務領域です。
5.よくあるご質問
Q:代表理事と理事長は同じものですか?
A:法律上の用語は「代表権を有する理事」で、これを定款で「理事長」「代表理事」と呼ぶことが多いです。重要なのは「代表権があるかどうか」で、代表権のある役員の変更は法務局への登記が必要になります。代表権のない理事の変更は、登記ではなく所轄庁への届出のみで足ります。
Q:高齢の代表理事が体調を崩しています。早めに動いておくべきことはありますか?
A:定款を確認し、代表理事が職務を遂行できない場合の代行ルール(副理事長、職務代理者など)が定められているかを確認しておくことをおすすめします。定められていない、もしくは現状に合わない場合は、定款変更や臨時の理事会開催を検討します。また、銀行口座の管理者権限、補助金の連絡窓口、契約書類の保管場所も、事前に新代表理事と共有しておくと安心です。
6.香川県内のNPO代表交代の窓口
香川県内に主たる事務所があるNPO法人で代表交代を行う場合、主な窓口は次のとおりです。
- 役員変更登記:高松地方法務局またはその支局(司法書士へ依頼)
- 役員変更等届出:香川県政策部県民活動・男女共同参画課(NPO担当)
- 定款変更の認証・届出:香川県政策部県民活動・男女共同参画課(NPO担当)
- 認定NPOの維持要件確認:所轄庁の認定担当窓口
- 寄付者への報告・税制優遇関連:顧問税理士
期限が短い手続き(登記は2週間以内)から優先して進める一方で、所轄庁との事前相談を並行して行うと、スムーズに進みます。
まとめ
- NPO法人の代表交代は、株式会社と違い「役員変更」として進める
- 代表権ある役員の変更登記は法務局へ2週間以内(司法書士の領域)
- 所轄庁への役員変更等届出は変更後の役員名簿・住民票・就任承諾書とともに提出
- 定款変更を伴う場合は、認証案件か届出案件かを所轄庁に確認
- 認定NPO法人は、代表交代を機に維持要件を満たし続けられるかも確認
次回(6月29日公開予定)は、「事業承継補助金とは?──対象・金額・申請の流れをわかりやすく解説」をお届けします。事業承継補助金の最新の公募情報を踏まえてご紹介します。
あおば行政書士法人
代表行政書士 大林 真由子
事業承継のこと、まずは気軽にご相談ください。
あおば行政書士法人では、香川県を中心に事業承継にまつわる
許認可の引継ぎ、契約書の作成、補助金申請のサポートを行っています。
「何から始めればいいかわからない」という段階からお手伝いいたします。
📞 お電話でのご相談:0877-85-3890
📧 メールでのご相談:info@aobagyousei.com
🌐 お問い合わせフォーム:https://lin.ee/5rOiAvV
初回相談は無料です。オンラインでの対応も可能です。
※ 本記事は2026年6月時点の公表データ・法令・制度に基づく一般的な情報提供です。個別のケースについては、必ず専門家にご相談ください。
引用元一覧
- 内閣府NPOホームページ「NPO法人ポータルサイト(役員変更)」 https://www.npo-homepage.go.jp/
- 内閣府NPOホームページ「認定制度について」 https://www.npo-homepage.go.jp/about/npo-kisochishiki/ninteiseido
- 香川県「NPO法改正について」 https://www.pref.kagawa.lg.jp/kenmin/vnpo/houjin/topic1.html
- 香川県「NPO法人Q&A 定款変更」 https://www.pref.kagawa.lg.jp/kenmin/vnpo/houjin/qa/06.htm
- 特定非営利活動促進法(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0100000007







