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6.12026
個人事業の事業承継──法人成りしてから継がせるべき?

「個人事業で長年やってきた建設業や飲食店を、息子に継がせたい。けれども法人にしてから引き継いだほうがいいのだろうか」──事業承継(じぎょうしょうけい:事業を次の人に引き渡すこと)のご相談で、最近とくに増えているのがこのテーマです。
結論からお伝えすると、個人事業のままでも引き継ぐことはできますが、手続きの観点でも、税務・取引契約の観点でも、いったん法人成りしてから承継する方法のほうがスムーズに進められるケースが多くあります。とはいえ、社会保険の負担増や法人住民税など、法人ならではのコストもあります。
この記事では、個人事業の事業承継の基本的な流れ、法人成り(個人事業を株式会社などに切り替えること)してから継がせる場合のメリット・デメリット、判断のポイント、香川県内での手続き窓口までを行政書士の視点で整理します。
1.個人事業の事業承継の基本──「いったん廃業」が原則
個人事業主の事業は、法人と違って「事業主その人」に帰属しています。したがって、別の人に事業を引き継ぐときは、原則として次の流れが必要です。
- 先代(現事業主):個人事業の廃業届を提出する
- 後継者:個人事業の開業届を提出する
- 事業用資産・在庫・売掛金などは、贈与や売買で個別に承継させる
- 取引先との契約、従業員との雇用契約も、後継者名義で結び直す
- 屋号付き預金口座、リース契約、許認可も、後継者名義へ切り替える
「個人事業の開業・廃業等届出書」は、所得税法第229条に基づき、事業を廃止した日から1か月以内に所轄税務署へ提出する必要があります(引用元:国税庁「廃業する場合」)。先代が青色申告をされていた場合は、青色申告の取りやめ届出書も合わせて提出します。
つまり、個人事業の承継は「先代の廃業」と「後継者の新規開業」という2つの手続きを行ったうえで、事業に必要なものを一つひとつ引き渡していくイメージです。
2.法人成りしてから継がせる場合の流れ
これに対して、法人成り(個人事業を株式会社などの法人に切り替えること)してから承継する場合は、次の流れになります。
- 先代が法人を設立し、個人事業の資産・契約を法人に引き継ぐ
- 先代の個人事業は廃業届を出す
- 法人の株主・代表者をいずれ後継者に切り替える(株式譲渡または代表者交代)
この方法の最大の特徴は、いったん法人を作ってしまえば、その後の承継は「株式の譲渡」または「役員変更」だけで完結する点にあります。事業に紐づく契約や許認可は法人名義のままで継続するため、取引先との再契約や許認可の取り直しが原則として不要になります。
なお、法人の設立登記そのものは司法書士の業務領域、設立後の税務申告は税理士の業務領域、社会保険手続きは社労士の業務領域です。あおば行政書士法人では、定款作成と建設業・飲食店などの許認可承継申請を担当しつつ、提携士業と連携して全体をお繋ぎする体制をとっています。
3.「法人成りしてから継がせる」3つのメリット
(1)取引契約・雇用契約の維持
個人事業のまま承継すると、すべての契約を後継者名義に巻き直す必要があります。法人形態であれば、契約主体は法人のままなので、契約の維持・継続がしやすくなります。
(2)許認可の承継がスムーズ
建設業許可、宅地建物取引業免許など、いくつかの許認可は法人成りに伴って事前認可制度を活用すれば、許可番号を維持したまま引き継げます(建設業許可については2020年10月の改正建設業法による事前認可制度。前回記事もあわせてご確認ください)。
(3)事業承継税制の選択肢が広がる
国税庁の「事業承継税制」には、法人版(非上場株式の贈与・相続時の納税猶予・免除)と、個人版(青色申告の個人事業者向け、2019年1月1日から2028年12月31日までの贈与・相続が対象)の2つがあります(引用元:国税庁「事業承継税制特集」)。法人成りすれば法人版の選択肢が新たに加わり、後継者の負担軽減を税理士と相談しながら設計できます。
なお、税制の適用判断・計算は税理士の業務領域です。
4.「法人成り」のデメリットも知っておく
法人成りには次のような追加コストや手続きが伴います。
- 設立登記費用(司法書士報酬・登録免許税)
- 法人住民税の均等割(赤字でも納税義務あり。香川県・高松市の均等割額は所管へ確認)
- 社会保険(健康保険・厚生年金)への強制加入による負担増
- 法人税申告のための税理士費用
- 帳簿・決算書作成の手間(複式簿記が必須)
「節税になる」「信用が高まる」というメリットだけで判断するのではなく、こうしたランニングコストを織り込んだ上で、税理士と一緒に試算することをおすすめします。
5.Q&A
Q:個人事業のまま息子に継がせる場合、屋号や電話番号はそのまま使えますか?
A:屋号は個人事業の場合「事業主に紐づく名称」として扱われるため、後継者が引き続き同じ屋号を使うことは可能です。ただし、銀行口座・電話番号・取引先との契約は名義変更や再契約が必要です。後継者の開業届にも、同じ屋号を記載することができます。
Q:先に法人化してから継がせるべきか、個人事業のまま継がせるべきか、判断の目安はありますか?
A:一般的に、許認可ビジネス(建設業・飲食店・運送業など)や、取引先との継続契約が多い事業、従業員が複数いる事業の場合は、法人成りしてから承継したほうが手続きが軽くなる傾向があります。一方、一人親方の個人事業で取引先も限定的な場合は、廃業+新規開業の流れで十分なケースもあります。最終的な判断は、税理士・行政書士を交えてシミュレーションすることをおすすめします。
6.香川県内の手続き窓口
香川県内で個人事業の承継手続きを進める場合、主な窓口は次のとおりです。
- 廃業届・開業届:所轄税務署(高松税務署・丸亀税務署・観音寺税務署など、納税地により異なる)
- 法人設立登記:高松地方法務局またはその支局(司法書士へ依頼)
- 建設業許可など許認可の承継:管轄土木事務所・保健所など(前回・前々回の記事を参照)
- 国民健康保険・国民年金関係:市町村役場
- 社会保険・労働保険:日本年金機構・労働基準監督署・公共職業安定所(社労士へ依頼)
複数の窓口で同時並行的に手続きが必要になるため、開始前に「やることリスト」と「スケジュール表」を作っておくと安心です。
まとめ
- 個人事業の承継は「先代の廃業届+後継者の開業届」が基本で、契約や資産は個別に巻き直し
- 法人成りしてから承継すると、契約・許認可の維持がしやすく、株式譲渡で包括的に承継できる
- ただし社会保険・法人住民税・税理士費用など、法人ならではのコストもある
- 事業承継税制(法人版・個人版)は税理士の判断領域なので必ず連携する
- 香川県内では税務署・法務局・土木事務所・市町村役場と窓口が分かれるため、計画的に進めるのが近道
次回(6月8日公開予定)は、「事業譲渡契約書の作り方──押さえるべき条項と注意点」をお届けします。法人成りや事業譲渡の場面で必須となる契約書のポイントを、行政書士の視点で整理します。
あおば行政書士法人
代表行政書士 大林 真由子
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あおば行政書士法人では、香川県を中心に事業承継にまつわる
許認可の引継ぎ、契約書の作成、補助金申請のサポートを行っています。
「何から始めればいいかわからない」という段階からお手伝いいたします。
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※ 本記事は2026年5月時点の公表データ・法令・制度に基づく一般的な情報提供です。個別のケースについては、必ず専門家にご相談ください。
引用元一覧
- 国税庁「廃業する場合」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/43.htm
- 国税庁「個人版事業承継税制」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/kojin.htm
- 国税庁「事業承継税制特集」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/index.htm
- 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zouyo_souzoku.html







