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5.182026
事業承継で必要な届出・手続き一覧──行政書士が解説

リード
事業承継(じぎょうしょうけい:事業を次の人に引き渡すこと)を始めようとすると、「どこに、何を、いつまでに出せばいいのか」がわからず止まってしまう、という声をよく伺います。実際、事業承継の届出は、税務署・法務局・都道府県・市町村・保健所と、担当する役所がいくつにも分かれています。
この記事では、事業承継で必要な届出・手続きを、行政書士・税理士・司法書士・社会保険労務士という4士業の担当領域ごとに整理してご紹介します。香川県で事業を営まれている方を念頭に置きながら、最近の法改正で承継しやすくなった許可についても触れます。最後までお読みいただくと、ご自身に必要な届出の全体像と、最初の一歩がつかめるはずです。
1.届出は「誰の仕事か」で4つに分かれる
事業承継に伴う届出は、扱う専門家別に大きく4つに分かれます。これを最初に押さえておくと、相談先で迷いません。
| 担当士業 | 主な届出・手続き |
|---|---|
| 行政書士 | 営業許認可の承継・届出、契約書の作成、補助金申請 |
| 税理士 | 税務署への各種届出、税務申告、贈与税・相続税の計算 |
| 司法書士 | 法人登記の変更(役員変更・本店移転・合併等) |
| 社会保険労務士 | 従業員の雇用継続、社会保険・労働保険関係の届出 |
このうち、当事務所(行政書士)の業務範囲は、おもに 営業許認可 と 契約書 の領域です。税務申告や法人登記、雇用保険手続きについては、それぞれ税理士・司法書士・社労士へ橋渡しさせていただきます。
2.行政書士が扱う主な許認可の承継
業種により、承継のしやすさは大きく異なります。とくに重要な改正があった2つの許可を中心にご紹介します。
(1)建設業許可──事前認可制(2020年10月1日施行)
建設業許可は、2020年10月の建設業法改正により、事業譲渡・合併・分割の場面で「事前認可」を受ければ、許可番号の空白期間なく承継できるようになりました。被相続人(亡くなった方)の許可を相続する場合は、死亡後 30日以内 に認可申請を行うことが求められます(法的根拠:建設業法第17条の2、第17条の3)。
改正前は、いったん許可を廃業し、新たに許可を取り直す必要がありましたので、その間は公共工事の入札参加などが止まってしまうという課題がありました。事前認可制によって、この空白期間を解消できるようになっています(引用元:国土交通省「建設業者の地位の承継について(建設業法第17条の2・3)」)。
(2)飲食店営業許可──地位承継届(2023年12月13日施行)
食品衛生法改正により、2023年12月13日から、飲食店をはじめとする食品営業について、事業譲渡の場面でも「地位承継届」の提出のみで承継ができるようになりました。それまでは譲渡側の廃業届と譲受側の新規許可取得が必要で、その間は営業を止めざるを得ないという実務上の負担がありました。
承継の対象は、事業全体の譲渡に限られます(事業の一部譲渡は対象外)。届出には、譲渡を証する契約書や覚書などの提出が求められます(引用元:厚生労働省「食品衛生法施行規則の一部改正等」2023年12月13日施行)。
(3)その他の許認可
業種に応じて、以下のような承継・届出が必要になります。
- 一般貨物自動車運送事業(運送業):事業譲渡時の認可申請(貨物自動車運送事業法)
- 古物商許可:書換届出(古物営業法)
- 産業廃棄物処理業:承継認可(廃棄物処理法)
- 宅地建物取引業:免許換え・廃業届(宅地建物取引業法)
- 風俗営業:相続・合併・分割の承継承認申請、事業譲渡は新規許可(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)
これら許認可の承継は、業種ごとに法令も提出先も異なります。香川県内の許認可は、香川県庁・各保健所・四国運輸局・香川県警察本部などが窓口です。手続きの順番を誤ると、無許可営業期間が生じる恐れがありますので、事前にご確認いただくことをお勧めします。
3.他士業が扱う届出と「橋渡し」の実例
ここからは、行政書士の業務範囲外の届出のうち、事業承継で必ず出てくるものをご紹介します。当事務所では、適切な士業へお繋ぎする橋渡し役を担います。
税理士の領域
個人事業を廃業して法人に承継する場合、税務署へ 個人事業の開業・廃業等届出書 を提出します。後継法人の側でも、法人設立届出書・青色申告承認申請書などが必要です。贈与税・相続税の計算、特例承継計画に基づく事業承継税制の活用(経営承継円滑化法)など、税務判断を伴う部分はすべて税理士の業務領域です。
司法書士の領域
法人形態で代表者を交代する場合、法務局への 役員変更登記 が必要です(会社法)。合併・分割・株式譲渡なども、登記簿への反映は司法書士の業務領域です。
社労士の領域
従業員を引き継ぐ場合は、雇用保険・社会保険・労災保険の手続きが必要です。雇用関係を維持しながら経営者だけを変更するのか、いったん退職・再雇用とするのかによって、必要な届出が変わります。
想定Q&A
Q:「建設業と飲食店、両方を経営しています。順番はどうしたらいいですか?」
A:許可ごとに事前認可・事前届出・事後届出と性質が異なりますので、まずは保有する許可を一覧化し、承継スケジュールを「逆算」して組むことをお勧めします。たとえば建設業許可は事前認可なので承継日より十分前に申請が必要です。一方で飲食店の地位承継届は事業譲渡の前後で提出が可能です。当事務所では、こうしたスケジュール表の作成をお手伝いしています。
まとめ
- 事業承継の届出は、行政書士・税理士・司法書士・社労士の4士業に分かれる
- 行政書士は許認可の承継、契約書、補助金申請を担当する
- 建設業許可は2020年10月から事前認可制で空白期間なく承継可能
- 飲食店営業許可は2023年12月から地位承継届で承継可能
- まずは「保有する許認可の一覧化」と「スケジュールの逆算」から始めるのが近道
次回(5月25日公開予定)は、「建設業許可は引き継げる?──事業承継と許認可のポイント」をお届けします。建設業許可の承継について、より実務的に掘り下げてご紹介します。
あおば行政書士法人 代表行政書士 大林 真由子
事業承継のこと、まずは気軽にご相談ください。
あおば行政書士法人では、香川県を中心に事業承継にまつわる 許認可の引継ぎ、契約書の作成、補助金申請のサポートを行っています。 「何から始めればいいかわからない」という段階からお手伝いいたします。
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※ 本記事は2026年5月時点の公表データ・法令・制度に基づく一般的な情報提供です。個別のケースについては、必ず専門家にご相談ください。
引用元一覧
- 国土交通省「建設業者の地位の承継について(建設業法第17条の2・3)」 https://www.mlit.go.jp/common/001365753.pdf
- 国土交通省関東地方整備局「事業承継等の事前認可制度(建設業法第17条の2、17条の3)」 https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000877209.pdf
- 厚生労働省「食品衛生法施行規則の一部改正等」2023年12月13日施行 https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001176060.pdf
- 中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」令和4年3月改訂 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/shoukei_guideline.pdf
- 日本行政書士会連合会「法人・企業支援」 https://www.gyosei.or.jp/service/corporate







